月曜備忘録

東奔西走したり、近場をさまよったり、お家でぐったりしたり……週末の所業や所感を記録する場所(旧名:兵站の鬼を目指して……)


「賭博師は祈らない」を読んだこと

類まれなる晴天から一転、月曜には首都圏が豪雪に見舞われた1月下旬。
先は二十四節気で大寒だったとか。次の立春は本義的には陽気の始まり、即ちこれから暖かくなる季節であり、言い換えれば最も寒い頃合いのこと。
季節通りの振る舞いに見舞われて、二の句も告げられずに大混乱する首都圏を尻目に、月曜日の内房地域はみぞれ混じりでも平常運転です。
諸々の事情が重なって社内試験に釘付けとなり、週末が無為に溶け出したとしても、月曜日は容赦なく予定通りに過ぎ去って行きました。


週末は土日とも引き篭もりで、社内試験に備えて勉強モード。実際には半分は豚の角煮の製作に費やしていたとしても、“外出しなかった”事実には代わりはないでしょう。
こんな週末の過ごし方もいつぶりのことでしょうか。
2日も続けて自室にこもっていると、その性に合わなさにほとほと嫌気が差してしまいます。

そんな週末の日記のネタにふと思い至ったのが、最近久々に躊躇いなく“お気に入りのラノベ”と言える個人的ヒット作「賭博師は祈らない」の話でしょうか。作者は周藤蓮先生、電撃文庫の刊行です。
個人的に印象深いラノベといえば、ARIAと並んでこの10年を方向付けた原点とも言え、今でも度々ネタに上がる“10年前のラノベに囚われたヤバいオタクが一杯いる作品”こと「半分の月がのぼる空」や、10年以上前に日記で言及した「麗しのシャーロットに捧ぐ」と「楽園 戦略拠点32098」が挙げられるでしょう。
他に記憶を探ってすぐに出てくるタイトルと言えば妙に個人的な感性に刺さった「ポストガール」や「カレイドスコープのむこうがわ」がありますし、より近年ではアニメが(一部で)不朽の名作と化した「GJ部」も捨てがたいところ。
昨今の“ダンまち”や“このすば”も好きで買い集めているのは事実ですが、微妙に大ヒットとはズレたラインで心に刺さってしまうのは、世間に馴染めない一派の如何ともしがたい性でしょう。


そういった感性の持ち主に刺さっても、不吉な予感しかしない気もするのですが……それはそうとしても近年稀に見る個人的ヒットとなったのが、件の「賭博師は祈らない」シリーズです。
2018年1月の時点で3巻まで発刊。雰囲気としては4巻目も続く見込みですし、できることならもっと先まで続いて貰いたいところ。
1巻のあらすじは、そのまま電撃文庫から引用して――

 十八世紀末、ロンドン。
 賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。
 ――それは、奴隷の少女だった。
 喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。
 そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想いを通わせていくが……。
 やがて訪れるのは、二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。


――と言うもの。
既に去年の発刊時点で読んで、この日記上においても言及しているのですが、改めてあらすじを確認しても大体好みです。
薄幸少女と絆される男というシチュエーションだけでも、概ねクラクラするほど好みです。
徐々に表情と感情を取り戻し、章を、巻を重ねるごとに見せるリーラのコミカルな挙動や、要所要所で効果的に示される葛藤。あるいは主人公ラザルス側の不器用な愛情と、賭博師の本分としての無情さが鈍る描写は、謳い文句にある“痛ましくも愛おしい”交流を強く感じさせます。

しかしながら、この作品の魅力はそれに留まりません。
一つ目には徹底した合理主義と、王道ラノベ的ながらも無理を感じさせない論理展開でしょう。いずれの巻においても、登場人物の大半は非合法な世界に片足を突っ込んだカタギではない面々。そうであるが故に、己の身と立場を守るためには、カタギ以上に建前や体面を守らざるを得ない存在として描かれています。
このしがらみを効果的に描くことで、大体のことを賭け事(を経由した駆け引き)で解決しようとする“賭博の世紀”の物語を、現代の読者でも腑に落ちる行動原理へと自然に落とし込んでいるように感じます。
己の利益も大事だが、度を越した横紙破りはいずれ立場を失う。非情な敵役からロクデナシの主人公まで、シンプルですが社会に生きていれば自然と共感できる社会の縛りに基づいて、動機付けが成されて動いていく様は読んでて明快です。
さらに、だからこそ情に絆されて、純粋な利益から外れた行動を示したときの主人公の姿に、よりカタルシスを感じることができるようにも思われます。

もう一点は魅力的な登場人物の数々。2巻で重要な役割を演じ、3巻にも登場した“田舎の地主の娘”エディス一味をはじめ、複数巻に跨って登場する人物も少しは登場しますが、基本的には1冊きりの登場なのがポイントです。
1巻で重要な役割を演じた主人公の友人や関係者、3巻で物語の鍵を握った謎の少女ジュリアナ、2巻で物語の進展に貢献した田舎の子供。また、いずれも舞台を変えてしまった続巻では影も形も現れないのですが、それでいて十全に魅力的に描かれているのは驚くべきことです。
あるいは逆に、前巻では端役のような存在だったキャラが続巻では意味を成すのも、伏線の妙を読むようで感心するばかりです。
敵役となる存在も3巻とも入れ替わっていますし、多様な登場人物が惜しげもなく投入されながら、容赦なく順次退場することで物語としては煩雑になりすぎないのが絶妙です。

最後に本題の賭博についても、毎回違うゲームを題材にしており興味深いです。
違うゲームと言っても、道具はダイスかトランプと相場が決まっていますが、それでも時代背景を踏まえて“それっぽい”ゲームと“ありそうな”イカサマで物語のクライマックスに賭博勝負が演じられます。
登場人物同士の掛け合いや腹の探り合いにイカサマ、ハラハラするような熱い駆け引きも賭博を題材にしたラノベとして、当然の魅力です。
が、それ以上に個人的に魅力的なのは、主人公の段取り八分と言わんばかりに仕込まれる先手を打った仕掛けや予防線による勝負の幕引きでしょう。
読書メーター等の感想を見ていると、拍子抜けすると言った否定的な反応も見かけますが、劣勢側が大勝負を仕掛けるならむしろ当然で自然なことだと思うのが私の感想です。
どんな一手で勝負を片付けるのか、それも含めてワクワクしてハラハラさせるのだと思いますが、この辺は勝負事に対する姿勢の好みかも知れません。

何はさておいて、久しぶりにぐっと語りたくなるようなラノベに出会ってしまった印象。ここ半年以上、手が空くと読み直してしまいます。
同じ本を週一の頻度で開くなど、教科書以外では初めての経験かも知れない事象です。
今だからこそ“頻繁に読む”で済んでいますが、10年前に出会っていたらトランプにハマってイギリスに飛んでいったか……あるいは逆に、まだ感性に刺さらず流し読みで終わっていたか……。
詮無きタラレバですが、気になってしまうシリーズを書き残さずには居られませんでした。


それはそれとして、あまり外出がはかどらない昨今。
行きたいとこリストは積もるばかりですが、このシリーズの舞台となっているイギリスもいずれは訪れたい土地にノミネートです。
特に3巻の舞台、バースは旧市街の鉱泉地区が世界遺産にも指定されているそうでこれは機会を見て行かなければならない土地の筆頭と言っても過言ではないでしょう。

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