月曜備忘録

東奔西走したり、近場をさまよったり、お家でぐったりしたり……週末の所業や所感を記録する場所(旧名:兵站の鬼を目指して……)


立山再拝の話

相も変わらぬ根無し草の今年2017年。気付いたら職場に新人が配属されていたそうですが、つい先日まで顔も知らなかったのですから重症です。
知らぬ間に馴染まれてしまっては先輩としての立場がありませんね、存在感が薄くては仕方のないことですが……。

さて、天候に今一つ恵まれなかった今夏ですが、珍しく快晴の週末となった8月最後の週末、26日と27日。
出張案件のスケジュールが久しぶりに遠出に好都合な配置となったので、気合を入れて遠出することにしました。
目的地は6月にも訪れて、息を呑むような雪景を目の当たりにした立山黒部アルペンルートです。
雪が溶けたら登りに行こうと思っていた立山、2ヶ月越しに手の届くところまで機会が巡ってきたのですから逃す手はない次第です。


今回の出発地は神奈川の実家でしたが、経路は基本的に前回と同じ。中央線のあずさ3号に乗って11時過ぎに信濃大町駅に。
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お盆休みを外しているとは言え、雪が溶けきったハイシーズンのアルペンルートです。トロリーバスのある扇沢駅行きのバスもほぼ満席となる混雑ぶり。
つい先日も乗った関電トンネルトロリーバスに乗り込んだら、あっという間に黒部ダムに到着してしまいます。
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前回と打って変わった晴天ぶり! 夏の観光放水も行われていて、まさしく観光地として知ってる黒部ダムの風情です。

特に観光放水は前回見損ねただけに、目の当たりにすると現実感のない規模に圧倒されてしまいます。
ダム直下の自然環境に配慮して噴霧状に放水するという特殊な放水口、パッと見ただけではそういう物かと思うばかりですが、直近の作業通路に人が立てば目を疑う巨大さをより実感することができます。
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遠目にはホースのお化け程度に見えた放水口の水の筋一つ一つが、実は人の背丈ほどもある事実。
巨大構造物の偉力をまざまざと感じさせられます。可能なことなら近くに寄って見てみたいですが、どうすれば良いのでしょうか。

荒々しい観光放水の一方で、黒部ダムの上面は晴天下の穏やかな休日そのもの。凪いだ湖面が深緑の水を湛えて黒い山並み、青い空との対比を彩ります。
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ダム上にはゆるキャラのきぐるみも現れて……なんか記念撮影もしていました。

黒部ダムをひとしきり観光したら、次はケーブルカーで黒部平駅。前回は雪と雨に閉ざされていましたが、季節が巡れば蝶と高山植物の宝庫です。
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黒部平駅一帯は駅施設と高山植物園から構成されています。
高山植物園はその名の通り、様々な花や蝶を観察することができるのですが、特に薄い水色と茶色に彩られた大きな蝶がよく目について気になります。
案内板曰くアサギマダラという種類なのだとか。上高地に行ったときも見かけた気がしますが、Wikipedia曰く「標高の高い山地に多く生息する」とのこと。なるほど、然りです。
他にも「写真のほか何もとらない、足跡のほか何ものこさない」と標語が書かれた看板も、文言の簡潔さが印象的です。重箱の隅なことを言えば、足跡も残さない方が良いのですが……自然観察では大事にしたい心がけですね。
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黒部平から次の大観峰駅はロープウェイで一飛び。大観峰駅、何度見ても何故そこに駅を作ろうと思ったのか不思議なほど、絶壁に張り付くその立地に驚かされます。

大観峰駅は軽く見物して通り抜けて立山トンネルトロリーバスを室堂まで行けば、この日の目的地は着いたも同然です。
夏日快晴の室堂平は絶景の一言、他に何の説明も要りません。
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みくりが池に立山の山並みが映り込む様は、パンフレットで憧れた高山の景色そのままの息を呑むばかり素晴らしさです。
このまま永遠に眺めていられそうな絶景のなかを、何者にも煩わされず歩けるのですから幸せそのものと言っても過言ではないでしょうか。
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室堂平から遊歩道を経由して、東側に雷鳥沢という広い谷へ向かいます。その谷の陰の辺り、圏谷の絶景を正面に見据えた立地に、この日泊まった雷鳥沢ヒュッテがありました。
お宿は嬉し恥ずかしの山小屋初体験。大部屋に布団を敷いて寝る雑魚寝スタイルや、充電用のコンセントがないこと、電波もあんまり入らないこと……などなどと山の宿の洗礼に最初は面食らいましたが、慣れれば面白いものですね。
立山を真正面に望める温泉があり、絶景を眺めながら一日の疲れを癒やせたときは、これだけでこの週末は報われたと言い切れるほどの贅沢を感じました。

山小屋での夕食後は茜色に染まる立山を望んでいるうちに夜に。欲を言えば少し足を伸ばして、夕陽の映える景色を撮りたかった行きたかったのですが、刻一刻と変化していく絶景を前に、部屋に戻って装備を整える時間すら惜しく感じてしまいました。
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ひとまず部屋に戻り、夜半に再び外へ出たのは星を観るため。予期してなかったのですが、右側に仄かに光る雲のようにそれは、恐らく天の川。
写してから気付いたので、驚きと興奮でテンションは高まるばかりです。肉眼では残念ながらよく見えなかったのですが、写真で知ってる光景と同じものを、自分でも撮れたことの喜びは一塩でありました。


斯様な次第で早寝早起き、21時には寝付いて5時過ぎには起床し、6時の朝食を摂ったら日曜日はいよいよもって立山目指し出発です。
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日の出後も山の陰にあたる雷鳥沢は薄暗い日陰の様相ですが、気にせず出発してキャンプ場の真ん中を経由し浄土沢の筋を目指します。

この日の登山経路はガイドマップにもあまり載っていない通称「神の道」と称される浄土沢沿いに一ノ越まで上がっていく登山道です。
地図に道筋こそ載っているものの、あまりにも案内がないので不安に思っていたのですが、現地で聞いてみると余裕をもって歩ける道になっているとの情報。
「キャンプ場を過ぎて、浄土沢の橋を渡ったら右側へ」と経路の入り口に関する説明こそ、少し心もとないですが大丈夫。この日は見通しの効く天気だったことも幸いして、迷わずに目的の道を見つけることができました。
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案内板が壊れていたことだけは……少し不安になりましたが。

立山登山の主要ルートは、室堂のバス停付近から真っ直ぐに一ノ越と呼ばれる立山と浄土山の鞍部に至り、そこから稜線沿いに頂上を目指すもの。もう一つに、雷鳥沢から別山や剣岳のある方面へ斜面を登り、稜線沿いに立山に至る経路です。
浄土沢の登山道はちょうどその中間、雷鳥沢から一ノ越方面へ谷を遡り、途中で室堂からの経路に合流するものです。雷鳥沢まで来たものの、圏谷を大回りするような稜線巡りに付き合うほどの自信がない人にうってつけな短絡ルートになります。
谷筋なので雪解けが遅いのと沢越えがあるのが難点でしょうが、この季節なら高山植物が美しく傾斜も穏やかな、まさに浄土のごとき道のりとなります。
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日陰ながらも気持ちのよい道程。何も言うことはありません。ただ、淡々とせせらぎに耳を傾けながら登るのみです。

一ノ越まで至れば日陰を脱して、高山らしい透き通った強烈な日差しが急激に差し込みます。
ここで一休みして、水分補給やトイレを済ませたら、いよいよもって立山の頂へがれ場を一直線に上がるだけです。
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見るからに急傾斜、簡単に崩れて小石が降ってくる物騒な道程ですが、ここまで来たらワクワクが止まりません。標準的には1時間ほどの道程を、標準通りに1時間ほどかけて登れば、ついに目的地の立山は雄山の山頂に鎮座する雄山神社です。
頂上付近には休憩小屋も兼ねた社務所があり、神職さんや巫女さんも駐在してお守りや御朱印から豚汁にビールまで売っています。
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真の頂上へは登拝料を払うと入ることができますが、合わせてちょっとしたお祓いもしてもらえます。
お祓いの際には神職の方から簡単な山の解説もいただけるのですが、曰く立山は日本三霊山で唯一、他の二つの山が見えるところなのだとか。
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そうは言っても、特に富士山は条件が良くないと見えず、曇り続きの今シーズンではこれほど綺麗に見えるのは珍しいとのことでした。
掛け値なしに運が良かったと言えそうです。

ちなみに立山は正確には神社のある雄山の他に、大汝山、富士ノ折立と合わせて3つの峰の総称なのだとか。
一つ目の頂には至りましたが、残り2つも稜線沿いに40分ほど辿れば行けてしまうそうです。
この絶好の日和のもと、ここで登らずに引き返す手はないですよね。慌てず無理せず、でも積極果敢に進んでいきましょう。
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立山の最高峰にあたる大汝山は標高3015m、雄山も3003mあるそうですから、これで3000m越の大台突破ですね。
大汝山の頂からは眼下に黒部ダムのダム湖、黒部湖の全容を眺めることが出来ます。
視界の左端にチマっと置かれた板のようなものが、前日に魅入ったあの偉大なる黒部ダムです。あの現実感のなかった巨大構造物が、大自然の作りだす大きさの前には豆粒にも等しい対比になってしまうのですから、声になりません。
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信じがたいものを見た思いで頂上を後にすれば、こちらの峰の直下にも休憩小屋があります。
案内板曰く物資はヘリ輸送しているのだとか。どうやって荷物を運び上げるのかと不思議に思っていましたが、答えは存外に力技なんですね。文明万歳です。

最後の峰は最も低いのに妙に険しい富士ノ折立。皆さん揃って稜線の少し広くなった場所で荷物を降ろし、手ぶらで頂上に挑んでいたので、見習ってカメラ片手に登って撮って降りてきます。
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これにて3つの峰を登り終えたので、胸を張って立山登山したと言えることでしょう。

富士ノ折立から向こうにも稜線沿いの道は当然ながら続き、雷鳥沢に戻る経路や、はたまた立山三山の別山やかの有名な剱岳へと通じる道も用意されています。
魅惑的な天気と道程ではありますが、時間も装備も体力も流石に不足気味。調子に乗って山に呑まれては元も子もないので、後ろ髪を引かれる思いながらに引き返すことにしました。
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稜線を辿って雄山神社に帰れば、いつの間にやら登山客でごった返しています。
朝食を食べてから来たのか、はたまた麓からの初バスで来たのか、これ程の人が集まるとは流石に想像していませんでした。
お盆など立錐の余地もない状況に陥ってしまうのではと心配してしまいます。

雄山神社の売店で豚汁を食べて昼食としたら、今度は登りより危ないという下り行程の始まりです。
列をなして登る登山客を尻目に、崩れやすい足場を慎重に一ノ越へと戻りました。
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一ノ越からは道が二手に別れ、一つは真っ直ぐにバス停のある室堂へ戻る主要なルート。もう一つは隣の浄土山を経由して大きく巡りながら室堂へと降りるルートです。
大回りコースこそ断念しましたが、天気も時間もまだまだ余裕のあるタイミング。休憩がてらに一ノ越で経路を再検討し、少し遠回りしてみることにしました。
浄土山は立山と異なり、上までなだらかで今ひとつ頂きのわからない形をしています。頂上と思われる場所も広々とした空間が広がり、富山大の観測施設(?)なんかも立てられているほど。先程まで居た峰々とはだいぶ印象の異なる山並みでした。
それでも振り返れば、眼前には先程まで居た立山の偉容が聳え立っています。
さっきまであそこに居たのかと思うと、不思議な感慨が湧く光景。澄んだ空気のせいか、それともその巨大さのせいなのか、妙に遠近感が狂い、つい先程に2時間掛けて歩いた道程のはずが、一っ走りすれば行けてしまいそうな気がしてしまいます。
「目の前に山があったから登った」といえば、登山好きの狂った感覚を端的に表す小話のようですが……こうやって手の届きそうな明瞭さで頂上を示されれば、その気持もわかってしまいそうな光景でした。

そんなこんなで浄土山を越えて、眼下に室堂平が見えてきたら山歩きも終りが近いです。
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整備された遊歩道に戻ってきたら、気分は下山したも同然の一安心感。改めて周囲を見渡せば、数時間前まであの峰々に居たのかと、近いような遠いような不思議な気分になります。

無事に平野にたどり着いたら、最後の仕上げに前回は雪の下に隠れていた立山室堂を見学。この立山室堂は室堂平の名前の由来ともなった現存最古の山小屋として重要文化財指定されているのだとか。
中は簡単な資料館として見学可能な施設となっており、往古の山小屋の構造や立山信仰について学ぶことができます。
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隣の室堂山荘の食堂でカレーを食べたら、下山客でごった返すバスに乗り込んで富山駅を目指すのが最後の難所でしょうか。
継ぎ目なくやってくる高速バスよりも、その乗り継ぎ先、美女平から立山駅へと下るケーブルカーが大変だったことだけを特筆しておきましょう。

無事に富山駅まで戻ったら、駅前の飲み屋さんで新幹線の時間まで富山の幸を堪能して、関東へと戻ることになりました。


月曜は幸いにも夕方からの勤務だったので、午前中はぐったりと体力回復に充てて午後に出勤。
出張先での肉体労働、頭を使わないので次の目的地探しで頭はいっぱいです。

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